「マイミクなろうよ」

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私が大学に入った時、まだガラケーが主流だった。

入学後にできた友達とは電話番号とメールアドレスを「赤外線通信」で交換した。

今の若い子は知らないのだろうな。赤外線通信。

ガラケーとガラケーを接近させてデータを送信し合い、互いの連絡先を端末に登録するのだ。

そして「マイミクなろうよ」も定番だった。

当時はやっていたミクシィというSNSで友達になることを「マイミクになる」と言った。

私はバドミントンサークルに入ったので、そのサークルの友だちとマイミクになった。

そもそもミクシィで何ができたかというと、日記を書いたり、Twitterみたいに今起きたことをつぶやいたり、DM機能みたいなのがあったりしたと思う。かなり、うろ覚えだが。

自分のプロフィール欄に友達が紹介文みたいなものを書いてくれたりもした。

結構、青春のツールだったんだ、ミクシィ。

「あしあと機能」もあった。

誰かのページを見ると、自分の足跡が残ってしまう。つまりページを閲覧したことがバレるわけだ。

足跡のせいで好きな子のページを頻繁に見に行くことができなかった。あんまり頻繁に足跡つけたら、なんか引かれてしまう気がして。

逆に好きな女の子が自分のページを見に来てくれていたりするとテンションが上がった。「もしかして向こうも俺のこと好きなのかしら」などと妄想爆発である。

デートにでも誘ってみればいいものを、私はどうも進む方向が昔からおかしかった。

たくさん足跡をつけてもらえるように毎日ミクシィで日記を書こう、と意味の分からない努力を重ねた。

その子は私の日記によく「面白い」とコメントをくれた。

だから私はまた日記を書いた。

毎日毎日、飽きもせずミクシィに日記を書いた。その子も毎回のようにコメントをくれた。

でも、結局その子とは何もなく、次第に疎遠になっていった。

だけど、文章を褒められるうれしさを忘れることはなく、私は大学を卒業した後に文章を生業にした。

今は特に何かの媒体に書いたりはしていないけど、思えばあの子の存在が私の人生を変えたのかもしれない。

あの子は今どこで何をしてるのだろう。ふと、そんなことを思う。

手元のスマートフォンを手に取った。もうミクシィも、あの子の連絡先も入っていない。

二度と会うこともないのだろう。

機能面では劣る当時のガラケーを思う時、もう手に入らない何かにチクリと胸が痛くなる。

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この記事を書いた人

八王子でトイプードルと暮らしています。日常の思い出をつづります。

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