細いグラスに注いだレモンサワーをチュピチュピと飲み進める。
その姿はスポロンを飲む少女のようである。それでいてちっとも愛らしくないのだから絶望だ。
グビグビ飲むほどもう酒を欲してはいないのだが、風呂に入り眠りにつくのももったいない。
だから私はこうして、夜にけじめをつけぬまま、チュピチュピとサワーを舐めるように飲み続けるのである。
この缶を飲み干しても、まだ焼酎のボトルもあるし、ウイスキーもある。
小腹が空いて冷蔵庫を開けてみるが、食うものは何もない。
…………。
人口7万人の地方都市。私の住む古びたマンションはその中心部にあるが、昼も夜も静かである。
開け放した窓の外からは、秋の虫以外には何の音もしない。
私の実家は周囲が田んぼだったから、カエルやトラクター、草刈り機がうるさかった。ここにはそれもない。
思えば、都会の人は地方を「田舎」とくくるけど、中心市街地から車で5分走ると田園風景に様変わりする地方都市の方がある意味で多様性に富んだ街並みであるともいえる。
地方といっても色々だ。
…………。
静かだ。心底落ち着く。
しかし、この美しい静寂を有する街は、人の寂しさを癒やさないのだと知る。
ここにはキャバクラもホストクラブもない。ほんのいっとき寂しさを癒やすような虚飾が存在しない街。
だからこそ美しいのだが、寂しい人間は寂しいままに生きる、そういう街であるとも思う。
…………。
リンリンリン。秋の虫に耳を傾け、レモンサワーをまたチュピチュピと喉に流し込む。
孤独と抑鬱と寂寥さえも、大人の嗜みと思えば悪くない。
そんな強がりを言いながら、うまくもない酒を飲み進める。
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