33歳。特に不満はない。
犬を連れて桜を眺め、帰宅後はドラマを観る。
最近はNHKオンデマンドを契約し、2016年の大河ドラマ「真田丸」を観ている。
「おっと、18時だ」と思えばチャンネルをプロ野球にかえて、ビールを流し込む。
ふと立ち寄ったコンビニで「キングダム」最新刊の発売に気づけば、ホクホク顔でレジに持って行く。
不満はないのだが、俺だけ人生足踏み状態なんじゃないかという気もしてくる。
ビールが飲めることを除けば、中学生とそう変わらない日常である。
◆
大学3年の時、Facebookを見ていたら、中学の同級生が21歳になる年でもう出産していた。
世は平成24年。21歳での出産はかなり早い。
だからいまだに印象に残っていて、今でも俺の心の中で「ものさし」になっているのである。
同級生は21歳で出産したのに、俺は33歳になっても一人でドラマや野球を観て、漫画を読んでいる。
といった具合に。
おいっちに、さんし。元気いっぱい、足踏みである。
俺の人生は、あんまり前に進んでいかない。
◆
20代の時は、結構仕事を頑張った。
こだわりを持って、一つ一つを仕上げたつもりだが、もう辞めてしまった。
俺が辞めてもいくらでも代わりはいる。
ストレスからは解放されて穏やかな暮らしだが、出世や人事異動などの分かりやすい人生の変化もなくなってしまった。
おいっちに、さんし。元気いっぱい足踏みをする俺である。
立場も肩書も役割も、何も変わらない日々をただ生きている。
◆
でも、あったはずのものは少しずつなくなっていく。
父親も死んだ。
足踏みをしていたら、俺だけ変わらないまま、周囲の景色が変わってきてしまった。
歯がゆいのに、今日も足踏み。
おいっちに、さんし。
懸命に生きてきた平凡な先人たちの偉大さを思う今日この頃である。
◆
きょう、灯りに照らされた桜を見た。
きれいだった。
「きれいだなあ」
独り言。
俺の言葉はいつも宙を漂うだけ。
誰の耳にも心にも届かない。
おいっちに、おいっちに。
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