こないだ、空き家状態になっている実家に寄った。
近くまで行ったので、窓を開けて少し空気を通すことにしたのだ。
せっかくなので棚の中からアルバムを取り出し、幼いころの家族写真を見ながら思い出に浸って時間をつぶすことにした。
コンコンコン。玄関をたたく音がする。
人が幸せだった過去に思いをはせているというのに、招かれざる客がやってきた。
近所に住むXさんである。駐車場に私の車がとまっているのをみて、やってきたのだろう。
何かと思えば「こないだ敷地に怪しい人がいたよ」と言う。
ここまで読んだ人は「なんと親切なXさん」と思うかもしれない。
実際はそうではない。怪しい人がいたというのは、取ってつけたどうでもいい理由である。本当か嘘かも分からない話だ。
Xさんは続けて「こないだその件でお母さんに電話したけど出なかったからさ」と言う。
つまり、私の母に電話をしたけど出なかったけど何かあったのというわけだ。
しらじらしい。
実際は私の母に電話などしていないだろうし、私の母が亡くなったことも知っているくせに、何も知らないふりをして話を聞きにきたのである。
要するに「なんで亡くなったの?」とは直接聞けないが知りたいという野次馬根性で、やってきただけなのである。
実際、母が使っていたスマホは私が管理しているが、Xさんからの着信はなかったはずだ(充電切れのまま放置してしまった時期もあったので断定はできないが…)
私は本当に腹が立った。この田舎の住宅地は昔からそうだ。
「〇〇さんのところの娘さんが高校に落ちた」
「〇〇さんとこの旦那さん、死んじゃったらしい」
「〇〇さんが病院に入院してるのを見た人がいる」
といった他人の噂しか娯楽のない連中。
こっちは自分の親の死に今も苦しんでいるのに、それを話のタネにしようとして、わざわざ訪ねてくるXさんの無神経さ。そしてそれを私に見破られている浅はかさ。すべてが嫌になった。
一時は実家を修理して住むことも少し考えた。だけど、ご近所さんという外的要因によって、「やっぱり嫌だ」という気持ちを再確認させられた。
田舎で戸建てを持つというのは、何かと面倒だ。念のために書いておくと、地方でも賃貸の場合は、ご近所付き合いが発生するケースは稀だ。「田舎=ご近所付き合い」とステレオタイプは、地方において戸建て所有率が高いことが要因である。
私は、故郷から遠くないどこかの賃貸を探し、そこで静かに暮らしていきたいと思っている。

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