子どものころ、テレビで見る訃報には、何の感慨もなかった。
80歳の俳優が亡くなったとしても、「老人が死んだ」というだけだった。
それは、その人の若かりし姿を知らないからである。
子どもには、時の流れというものが実感として分からないのだ。
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私は先日、34歳になった。立派な中年である。
この頃、私が小学生だったころに50代・60代だった人たちの訃報が増えてきた。
「あんなに元気だったのに」と、テレビ画面に映る訃報が胸に迫る。
それは無論、その人の若かりし姿を知っているからである。
時の流れが悲しい。
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時代が頼った男たちが、時の経過の中で衰えて死んでいく。
時の流れの残酷と、人の儚さを思う。
そして、頼れる男たちの中にもあったであろう苦悩や不安に、今になって思いをはせる。
「頼れる人」を演じ続けた強さにも。
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