夏というのは、犬を飼っている人間にとっては実にありがたくない季節である。昼間はアスファルトが太陽で熱せられ、とてもじゃないが犬を連れ出すことはできない。あんなところを無理に歩かせると、犬は肉球をやけどしてしまうのだ。実に繊細な獣である。
やむなく夜になるのを待って外に出るのだが、夜の散歩というのは大して面白くない。人が1人で物思いに耽るというなら夜道にも趣はあるのだが、犬連れで夜道を歩いても「ただ歩くだけ」で終わってしまうのだ。
春ならば桜を、秋ならば紅葉を、犬と一緒に愛でながら時に写真などを撮ってみる。冬になれば雑木林に赴いて、葉が落ちた木々の間を、落ち葉を踏みしめながら歩くのだ。思えば、冬の雑木林は虫もヘビも出ないから実に快適だ。ベンチに腰を下ろし、自販機で買ったホットコーヒーをすするのもよい。
それに比べれば夏というのは本当に面白くない。
そもそも、「夏」というのは100歩譲って6月から8月くらいを指すものではないのか。本来なら6月下旬くらいからお盆くらいまでが夏である。しかし近年は5月の末から9月の末まで暑いではないか。これはいったいどういう了見なのか。
異常気象、ここに極まれりだ。いつから日本はこんな熱帯地獄になったのだ。
試しに私は、自分が生まれた1991年の記録を探し、その年の9月13日の気温を調べてみた。地点は仮に東京とした。すると平均気温は21.7度、最高気温23.7度と出てきた。そして2024年9月13日の最高気温は33.9度である。その差は10.2度。この33年で10度以上上がっているのだ。
思えば私が子どものころは、9月になれば涼しい風がふき始めて、気持ちのいい秋晴れのなか運動会の練習などをしたものである。今あんなことをすれば、暑さで死んでしまう。
もういい加減この高温多湿な日々に耐えられずにいるが、週間天気予報を見ると、これからの7日間も最高気温が30度を下回る日は一日たりともなさそうだ。
貴重な犬との時間を年間「4カ月」も夏に奪われる。じつに癪である。
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