間の抜けたヤンキー

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中学の同級生でTという男がいた。

彼は誰からも恐れられていない悲しいヤンキーだった。

それもそのはずである。

彼は「5日間で5万円かかる塾の夏期講習をサボる」という実に地味で、とてももったいない尖り方をしていたからだ。

実害もないが、人を惹きつける迫力もない。

こうなると、もはや何が彼を「ヤンキー」たらしめていたのか分からないが、彼はヤンキーということにはなっていた。

どこか間抜けなヤンキーだった。

彼はセルフで頭に剃りこみを入れていた。

時は平成16年。当時ヤンキーはいっぱいいたが、剃りこみなど入れている者は通常いない。

彼はただ一人、80年代を彷彿とさせる「剃りこみ文化」を2000年代に持ち込んでいたのだ。

そしてトップのヘアは、ドライヤーとワックスを駆使し、ツンツンに逆立てていた。

彼のあだ名は「リューク」になった。

無論、デスノートに出てくるこいつである。

言い得て妙である。

誰が言い始めたのか知らないが、これ以上に的を射た例えはあるまい。

リュークに学生服を着せれば、それがTである。それくらいに酷似している。

彼は14歳の立志式でみんなの前で「僕は医者になります」と高らかに宣言した。

しかし、風のうわさでは、彼は車の専門学校に行ったらしい。

多分医者になるのはすぐやめたのだ。

「ヤンキーの更生」を演出しようと企んだものの、医者になるハードルの高さに後になって気付いたに違いない。

彼のフェイスブックを見に行ってみた。

ある日は違反者講習を受け、ある日はなぜか休日を使って群馬県庁を観光していた。

そんな彼の近況。

「どこか間抜けなヤンキー」は今なお健在な気がした。

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この記事を書いた人

八王子でトイプードルと暮らしています。日常の思い出をつづります。

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