夏場は昼間の散歩ができないので、昨日も夕方になるのを待って外へ出た。車で約10分の大きな公園に足を運ぶと、東の空が暗く、サーっと冷たい風が吹いてきた。迫りくるのは夕立である。
最高に気持ちがいい。やはり自然には敵わない。こんなにも広範囲の気温を一気に下げてしまうのだから。まぶしさに弱い私には、薄暗い空も心地よいのだ。
突風というほどではないが、押し寄せる風は池の水も揺らす。
私のような精神が不安定な人間は、周囲が不安定な方が気持ちが落ち着く。昔から、休校になるような豪雨の日などは、かえって気分が落ち着く、あるいは高揚する人間なのだった。
歴史ある橋と結婚式場を薄暗い空が覆う。まるでヨーロッパの古城のような雰囲気でさえあった。
日本には珍しいほど整然とした街並みだ。
人は青空ばかりを持て囃すが、夕立こそが自然の織りなす芸術だ。美しい街を彩り、汚い街にさえ情緒をもたらす。
木々の葉が表裏を忘れたように、ゆらゆらと翻る。これもまた夕立のもたらす芸術である。
ああ、美しい。息をのむほどに。
カナカナカナ。哀し気なセミの声を背中に浴びながら、私は犬を抱えて車に乗り込み、洗濯物を干したままの自宅へと向かった。
コメント