ほしいものがない。
服も、車も、最新家電も。地位も名誉も、友も、恋人も。何もほしくない。
強いて言えば、ミラーレス一眼カメラが欲しかったけど、その熱も冷めてしまった。
いずれはノートパソコンと机とベッドだけが置かれた部屋で死んでいきたいと思っている。
だから今所有している本やCD、ゲーム機なども徐々に手放さねばなるまい。
多くのものを手放し、何もない部屋の窓を開けたら、外の風が吹きこんでくるだろう。
遮る物が一切ない部屋だが、出窓にレースのカーテンだけは付けてもいい。
揺れる真っ白なカーテンが、吹き込む風を可視化してくれるような気がする。
私は床に寝転び、窓の外の風景を、斜め下から見るのだ。
晴れ渡る青い空もよいし、日が暮れていく物悲しさもよい。
思えば、まだ文字さえ読めなかった幼少時代は、そうやって過ぎ行く今を見ていたように思う。
年を重ねて得たものの多くは、不快な雑音だったと気づく。
欲することと得ることを止めて、幼きころに戻っていきたい。
外に出て、目を閉じて、真上を見た。
首のコリがひどい。
ふかいため息をついてから、息を吸う。
ふわり。
キンモクセイの香りがした。
そう。こういうことで、残りの人生を満たしたい。


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