エッセー– category –
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エッセー
15階の風景
10年ほど前、大分県に住んでいた。 縁もゆかりもない街に、転勤でやってきたのである。 県庁からほど近いマンション。15階の部屋を借りた。北向きの部屋は日当たりが悪かったが、眼下に広がる街の向こうに別府湾を見ることができた。 穏やかな瀬戸内海であ... -
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満たされない人
鴨長明の「方丈記」を読んだ。鎌倉時代の随筆である。 子どものころ、教科書か何かで読んだ記憶があるが、大人になって読むとまた違った感慨がある。 およそ800年の時をへても、長明の文章が人の心を打つのは、なぜだろう。 読み手は、彼の「負け惜しみ」... -
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しゃがむ
数年前から「しゃがむ」ことにハマっている。 子ども時代の目線を味わえる気がして、なんだか懐かしい。 子どものころ、こういう塀の向こうに何があるのか分からなかった。 飛んでも跳ねても届かないから、答え合わせもできないまま、たくさんの風景を通り... -
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霧の降る日
霧降高原に行ってきた。 時期を狙ったわけではないのだが、ニッコウキスゲがちょうど見ごろを迎えていた。 鮮やかな黄色の花びらが標高1500メートルの斜面を彩る。 この花の寿命は、たったの一日。朝に開いたら、夜にはしぼんでしまうという。 だから今日... -
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糸
一時の感情に任せて極端な決定をする人は幸せになれない、とつくづく思う。 恋人との些細な口論で「もう別れる」と言って席を立つ人も、上司に噛みついて辞表をたたきつける人も、まだ立て直しが利く段階で作品を破壊してしまう人も。 後に残るのは、癒や... -
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手間
七輪大好きっ子クラブの会長を務めている(自称)。 七輪は楽しい。 炭を起こすのには時間がかかる。しかし、それはそれで愛おしい時間だ。 手間を愛そう。 よくよく考えてみると、手間を省くっていうのは、人に語れる体験を失うということだ。 ガス火で肉... -
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いい文章とは
複数の解釈が生まれる文章は0点である。 例えば「東京で働く花子さんの兄」という文章があったとする。東京で働いているのは花子さんなのか、それとも花子さんの兄なのか。二つの解釈が生まれてしまう。 だから「花子さんは東京で働いている。花子さんには... -
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得られぬ共感
夏になるとセミが鳴く。 「ファイヤーって鳴くセミいるよな」 私は友人に問いかけるが、誰も共感してくれない。 ファイヤー!ファイヤー!ファイヤー!ファイヤー!と鳴くセミがいるではないか。 共感を求める私に、誰一人首を縦に振ってくれない。 首をか... -
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34歳最後の日
明日6月9日、35歳になる。 35歳といえば、クレヨンしんちゃんの野原ひろしと同い年だ。 ひろしはすごい。 秋田県から上京し、もう15年も同じ会社に勤めているらしい。30代前半で係長に昇進したというから、社内評価もまずまずといったところだろう。 春日... -
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バイトの思い出
学生時代、コンビニで3カ月だけアルバイトをした。 この世にこんなつらい仕事があるのかと思ったし、今でも思う。 私にとっては最も適性のない仕事だったのだろう。 レジに立って客を待つ。たった3時間の勤務なのに、正面奥にある壁掛け時計の針が進まない...
