無気力な大学生活の話

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都内の私大に通っていました。

卒業して約10年たちます。

2010年の春に地方から出てきて、調布市内のマンションを借りました。甲州街道に面した7階建てで、僕の部屋は3階の一番奥にありました。

世田谷にでも借りればよかったものを、なぜだか不動産屋に薦められた調布の物件を見に行って、なんとなくそこに決めたのです。特急停車駅と聞いていたのに、最寄り駅は西調布。各停しか停まらねーじゃねーか。

狭いマンションで、玄関を開けたところに冷蔵庫とキッチンがありました。靴を脱ぐところに冷蔵庫があるんです。そしてたった6畳の部屋にベッドやクローゼットまで備え付けられていたものだから、いる場所もないような部屋でした。

窓から見えたのは密集した住宅地。生まれ育った町のような田園風景はどこにもありません。自ら望んで来たくせに、場違いなところに来てしまったような不思議な気持ちになりました。

朝は京王線に揺られて、大学へと向かいました。当時の西調布駅は今ほど整備された駅ではなくて、改札を通ったらもうホーム。洗練されたイメージの「トーキョー」とは程遠い質素な駅から乗車し、調布で特急に乗り換えて通学しました。

ぎゅうぎゅうに押し込まれた電車は、なぜだか朝はよく停車します。前の電車の出発待ちか何かで、後ろの電車が停車を余儀なくされるようです。地方なら、ドアからドアまで車移動。呼吸をするたびに、おじさんの整髪料のにおいがする電車内で、なにやら憧れたトーキョーの幻想がさらさらと崩れていく感覚を覚えました。

法学部とやらに入ったものの、別に弁護士や検察官を目指すような意欲はありません。それでいて「将来公務員なんて夢がないわ」などと考えてしまう。僕は努力のできないドリーマーみたいなところがありました。

目標もないうえ、僕は自分を律するのが苦手です。当初は9時には大学にいたのに、起きるのが9時になり、10時になり、しまいには12時になりました。12時に起きて準備をするとなると、もう3限すら間に合いません。「4限から出席するのも馬鹿らしいのではないか」などといった意見が自分会議の中で提起され、異議も出ぬまま、また寝るような日々を送りました。

僕の大学にはGPAと呼ばれる成績評価がありました。確か4.0がMAX。2.5くらいあれば平均的な学生といった感じでした。2.0を下回ると勉強不足といわれた中、僕のGPAは大学1年終了時で0.85でした。ちなみに卒業時のGPAは1.27くらい。関係ないけど、尿酸値は8.8あります。

無気力な日々がメンタルを蝕むのか、あるいはメンタルが不安定になると無気力になるのか。はたまた「ヒマ」は人を狂わせるのか。毎日毎日、得体のしれない焦燥感を覚えるようになっていきました。

「このままではいけない」と一念発起!

ということもなく、だらだらとした生活から抜け出せず、入っていたバドミントンサークルにさえ顔を出さなくなり、気づけば大学4年になりました。

今思えば、よくも大学4年になれたものだと感心します。大学の規定を調べたところ、僕の1個下の世代からは進級の条件が微妙に厳格化されていましたが、僕はギリギリで留年を回避できていたのです。あるいは僕みたいな者をもう進級させてはいけないという議論があったのかもしれません。

卒業がかかった最後の試験では「少年法はすごいと思った」みたいなアホなことを書いて、お情けで単位をもらったような記憶があります。まったくろくでもない4年間でした。

そんな僕は、大学卒業間近の3月ごろ、青春18きっぷを手に、広島へと向かいました。一人卒業旅行みたいなものです。鈍行を乗り継いで、途中で姫路城を見て、深夜に広島駅に到達しました。翌日、宮島で鹿とたわむれながら、寄せては返す穏やかな波を見ていました。「フーーーーー」と4年分のため息をそこで吐きました。

なんて穏やかなんだろう。なんて美しいんだろう。

思えば大学時代の4年間、「トーキョーの自分」の姿を追い求めて、下北沢の古着屋に行ってみたり、赤坂でバイトをしてみたり、必死で背伸びした時期もありました。でも結局のところ「無気力」に打ち勝つことはできなかった。何より、トーキョーらしきものを身に着けても、何も満たされなくて、かえって焦りが募った。

スーツケースに腰かけて、ずっとずっと海を眺め続けました。何か、このろくでもなかった4年間を肯定してくれるような景色を目に焼き付けたかったのです。

だから僕が大学生活を思うとき、いつも頭に浮かぶのはあの穏やかな瀬戸内海です。

都内の私大に通っていました。

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この記事を書いた人

八王子でトイプードルと暮らしています。日常の思い出をつづります。

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