環境省が出している「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」という資料を眺めていた。この資料には殺処分した犬と猫の頭数が都道府県別に記載されている。
私が見ている令和4年度版のデータでは、全国で福島県が突出している。犬と猫を合わせて948頭である。参考までに隣県を見てみると、茨城県は219頭、栃木県は78頭、宮城県は188頭だった。
犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(令和4年度版)
自治体によって数値の取り方に差異があることを考慮しても、福島県はダントツで多いといわざるを得ない。
1年分だけのデータを見るのはフェアではないと思い、令和元年度の資料も確認したが、この年も1559頭で突出していた。
割合を見ると、いずれの年も猫が9割ほどを占めている。殺処分をめぐる問題は、猫が主であるようだ。その猫の内訳をみると所有者不明の猫の割合が大きいので、いわゆる捨て猫・野良猫が多く対象となっていると思われる。
そこで福島県のホームページへと移り、関連資料を漁った。
動物愛護に関する懇談会の議事録を発見し、読んでみた。
所有者不明の猫の引取り数は、全体の75%を越えます。所有者不明の猫は、引き取っ
た時点で感染症が疑われるものも多く、我々も他の猫に感染を広げないためにも、トリ
アージをしなければならない。https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/437194.pdf
高齢者や生活困窮者からの相談が増加傾向にありますが、このような方々は飼っている猫が1匹や2匹ではない場合が多い。中には10匹以上飼われている場合もあります。https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/437194.pdf
残念ながら、福島県はまだまだ捨て猫が多いので。その他の猫、いわゆる野良猫についても、他自治体の状況等を探りながら対応していきたいhttps://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/437194.pdf
福島県の殺処分数の順位について取り上げられることがありますが、この統計については国に報告している数字の母数の取り方や考え方が自治体によってまちまちという現状がありますhttps://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/437194.pdf
前述のとおり自治体による数字のとりまとめ方に差があることにも触れられており、留意しないといけない。他県では殺処分としてカウントしない事案を、福島県ではカウントするといった事象は起きうるということだ。
しかし、そういった事情を差し引いても、いまだ1000頭を超える殺処分が続いているのは「高止まり」と言わざると得ない。
なぜなのか。
肝心の「殺処分の背景にあるもの」については、捨て猫や野良猫の存在、高齢者らによる多頭飼いなどが指摘されるのみで、一般論の域を出ていない。つまり、福島県特有の事情が見えてこないのである。
そこで私は福島県の基本情報で、県の総面積と可住地面積に注目した。いずれも2015年時点のデータで全国3位である。そして可住地面積の人口密度は全国で6番目に低い。
参考
総面積:13780平方キロメートル(全国3位)
可住地面積:4218平方キロメートル(全国3位)
可住地面積1㎢あたりの人口密度:450人程度(全国42位)
つまりは人が住むことのできる面積が広く、面積あたりの人口が少ない。野良猫が広範囲に分布しやすく人目につかない場所で繁殖が繰り返される可能性が高い環境とは言えまいか。
同様に可住地面積の広い茨城県や千葉県でも、令和4年度の猫の引き取り数は2000頭に迫る勢いだった。ただ、その2県では大部分を返還・譲渡することに成功している点に福島県との違いがあり、2県は殺処分数を比較的少ない水準にとどめている。
今後、福島県では野良猫の繁殖抑制と、引き取った猫の譲渡促進に重点を置いていくものと思われる。
福島県では平成18年度に4014匹だった猫の殺処分を令和5年度実績(見込み)では1035匹まで減らすなど、まったく無策というわけではなく、むしろ状況は改善へと向かっている。今はまさに過渡期ともいえる時期であり、今後の推移に期待をしたいところだ。
また、行政の努力とは別に、我々一般市民はこうした野良猫の繁殖を防ぐために、猫の室内飼いを徹底しなければならない。猫が庭や街を歩くようなサザエさん的世界観とは、悲しいが決別せねばならないのだ。
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