結構、このブログのタイトルは刺さる人には刺さると思う。
充実していない日常を、恋愛や結婚によって一変させてやろうと考える人は案外多い。
架空の恋人を頭に思い描き、「うちの彼女、モデルなんだよね」「うちの彼氏、医者なんだよね」などと友人に語る自分の姿を妄想したことはないか。
あるいは、昼下がりの公園でベビーカーを押し、夕方は帰宅した夫あるいは妻と夕食をとる微笑ましい家庭を夢想したことはないか。
得体の知れない寂しさや劣等感を、素敵な恋愛や結婚生活が消してくれるのではないかという期待に人は簡単に溺れる。しかし、日々出会う人を品定めするような目つきで凝視する「陰湿な積極性」とも呼ぶべき態度は、かえって人を遠ざけてしまうのだ。
私は32歳男性。今でこそ俗世間の価値観と距離を置いてひっそりと一人の暮らしを楽しんでいる。
しかし、たとえば5年前はどうだったかといえば、まさにタイトルにあるような生き方をしていた気がする。
当時の私は会社員。中の上くらいの収入を得ていたが何やら満たされず、常に焦りと孤独を抱いていた。「素敵な恋人」「幸せな家庭」みたいなものを妄想し、それによってこの状況を打破したいと考えていた。
何より、それが王道の人生であると信じていた。人生に必須のパーツであるとさえ思った。存在しない恋人や家庭を空想し、それが自己肯定感を高めるライフイベントと信じて疑わなかった。
「20代で結婚、30で第1子、30前半でマイホーム」みたいな社会の物差しを勝手に自分の人生に照らし合わせ、足りないものを勝手に見つけて劣等感を抱くのだから、ご苦労な話である。しかしそういう人間は多いはずだ。
しかし、焦れば焦るほど、うまくいかないものだ。
なぜか。考えてみた。
焦燥感にかられた人間は、出会った異性を「合格ライン」と見なした瞬間、その異性に対する執着のような感情が生まれるのではあるまいか。
自分の人生を好転させるパーツだと思い込む。そして「逃した魚は大きい」などという慣用句さえ脳裏をよぎり、決して逃すまいと執着するのだ。
そして、その執着はなぜか簡単に相手に悟られる。人はすがられると逃げたくなるものである。
借金まみれの人間に言い寄られる金持ちの心境に似ているのではなかろうか。
人は本能的に充実していない人間を遠ざける。
つまるところ、充実が先にあってこそ、人との縁が素晴らしいものになるということである。
しかし、この充実というのがかなり難しい。
私も大学時代、旅をしたり、続きもしないのに楽器をやってみたり、新しいコミュニティに入ってみたり、バイトをしてみたりしたが、とうとう充実感を得ることは叶わなかった。
しかし、私はついに結論を得るに至ったのだ。
欠如していたのは「主体性」である。新しいコミュニティに入ろうが、バイトをしようが、そこには「新たな環境には、自分の人生を変えてくれる人物や経験があるのではないか」という期待があった。つまり他者への依存が見え隠れしていた。他力本願である。
新しいことを始めたように見えて、新たな依存先を求めていたようなものである。
そうではなく、もっと主体性がなければ充実は勝ち取れない。
好きだと思える分野で、資格取得を目指したり、作品を売ってみたり、そういう結果を自分でつかむような取り組みが重要だ。
特定の誰かの気持ちに左右されない結果を取りにいかねばならない。
SNSでの発信で1万いいねを獲得することを目指したっていい。いいね数を競うことに対する冷笑も見受けられるが、アーティストだって売り上げや観客動員数で権威を獲得していくのだから同じだ。そもそも人は承認欲求の塊なのだから。
そうやって結果を設定して、自ら勝ち取っていく主体性。これにより充実と自己肯定感を勝ち得るに至るのである。
世間で筋トレがもてはやされるのはこのためだ。
筋トレは、結果を得るにあたり、他者に振り回されるリスクはない。黙々とメニューをこなせば、必ず結果がついてくる。
しかし、間違っても「ジムでの出会い」などを期待してはならない。それは「ジムに行く」という行為は同じでも、依存先を求めようとする動機に基づいているので、充実の獲得に至るのが難しいのだ。
ちなみに私はカメラが好きなので、一眼レフを持って美しい風景や愛犬を写し、SNSにあげている。その行動を通じて友人や体験を獲得しようなどという邪念はない。ただただ自分が満足できるクオリティや世界観を追求しているのだ。そして、時に万バズをすることもあり、ニマニマなどしている。
その結果、私はかつてない充実感を得るに至ったのだ。
この充実感を勝ち得てからというもの、人がより寄ってくるようになった気がする。
充実していない人間には遠心力が働き、充実している人間には求心力が働くのだ。
人は楽しそうな人が好きなのだ。
そんな私だが、現在も恋人はいない。
コメント